現在の研究

【研究テーマ】

変分原理による多孔質岩石中内にある間隙水内の超臨界二酸化炭素吸収過程の解析

 

【研究要旨】

自由エネルギーを使う二成分系混合流体モデルでは潜熱や熱流を十分に考慮することができない。今回、これらを考慮できる変分原理を使ったモデルを提案し、間隙水内の超臨界二酸化炭素の吸収過程を解析している。

 

変分原理からのアプローチについて

<変分原理による非一様な温度場での相転移を伴う流体力学の記述>

物理系を記述する方法の一つに変分原理があり、物理学全般における指導原理の一つとして考えられている。これによると実現される運動は作用積分を最小にするように定まる。この原理を用いれば、複雑な拘束条件があっても系の動力学の定式化を行うことができる。連続体近似に置ける複雑流体の相転移の解析には、自由エネルギーの停留値を求める変分原理が用いられており、いくつかモデルが提唱されている。例えば、二相系のDyanamics を記述する場合には、自由エネルギー密度f(φ,∇φ) を使った定式化がよく用いられる。ここでφ は秩序変数で、気液の混成割合などを表す。界面の効果は、秩序変数の勾配∇φ の項で表される。しかしながら、通常の自由エネルギーを用いる理論では、温度が一様かつ等温であることが仮定されており、温度が非一様な場合や、相転移に伴う吸熱または発熱などによる熱の影響を考慮できない。実際の系では温度勾配が存在し、熱流や相転移に伴う潜熱の効果を考える必要がある。例えば、固相液相における温度勾配のある系を考慮する方法として、自由エネルギー密度に温度依存性をもたせ、熱拡散の方程式と連立させる方法がある。しかしながら、一般的に温度が非一様な場合にどうのように基本仮定をおくかは定かではない。

 

<非ホロノーム拘束を用いた変分原理>

気液混合系において温度勾配のある系でも適用できる方法を提案した。ラグランジアン密度L が質量密度や速度場などの物理変数とエントロピーs の関数で与えられたとする。ラグランジアン密度L は時間空間に陽に依らないとすることから、時間空間並進対称性を持つとする。これはネーターの定理により、系のエネルギーと運動量が保存することを意味する。次に熱力学について考える。エントロピーの時間発展は一般的に

∂s/∂t= Θ+∇• J        (1)

で与えられる。ここでΘ > 0 は散逸関数で、J はエントロピー流である。式(1) はエントロピーsと他の物理変数の間に拘束条件を与える。この拘束条件が系の時間空間並進対称性を保つように定めると、Θ およびJが決まる。この方法は気液混合系などの一般的な相転移を伴う系の記述の枠組みを与える。系のダイナミックスは、拘束条件(1) の元での作用 d4x L を最小にする必要条件から定まる。これは、Dynamics van der Waals theory[1] の拡張になっている。彼らは界面の効果が秩序変数の勾配∇φ の項で与えられる系に非自明なエントロピー流が存在することを示し、気液混合系における運動方程式を導いた。本研究は、相転移を伴う温度勾配がある系のダイナミックスが、ラグランジアンが与えて、その時間空間対称性を保つエントロピーの式(1) を与えることで求まることを示した。この方法は、二成分流体、粘弾性流体、液晶についても適用可能である。また、散逸がない場合についてはその相対論化も行った[2]。

 

参考文献

[1] A. Onuki, Phys. Rev. E 75 (2007) 036304.

[2] 深川宏樹 流体力学における変分原理の改良慶應義塾大学大学院理工学研究科2012 年度博士論文

 

 

 

 

お問い合わせ先

Hiroki Fukagawa's HP

© 2014 All rights reserved.| は無断で加工・転送する事を禁じます。

無料でホームページを作成しようWebnode